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4.25 韓流100話(その35)「アイデンティティ」 [韓流100話]

<一日一楽日記>(落ち込みから脱却・幸せ膨らむ ※1
 10月27日に紹介しました木口政樹さんの著「おしょうしな韓国 ほのぼの韓流100話」から、ビックリさせられるお話を、気まぐれ的にちょい出しして紹介します。今日はその第35回です。
 先に、脚注より、言葉の意味の説明をあげておきます。
 アイデンティティ:…意味としては、自分は何者なのか、どこにその存在の根拠を持っていて、何をなすべきか、という個人の心の中に保持される概念。…日本人として生まれて、どれだけ日本のことを思い愛しているのかということ。…
95 アイデンティティ
…かれこれ11年ほど前、わたしが博士論文を準備しているときのことである。…妻の実家のすぐ近くに日本人でありながら戦争前に韓国人と結婚し、当時まですでに60年以上も韓国に暮らしているおばあさんがいるということだった。…つもる話を日本語でインタビューしてみようと出かけた。…
 ちょうど2002年の日韓ワールドカップの最中であった。おばあさんは…テレビでワールドカップを見ていた。サッカーが大好きという。
 雑談はすべて韓国語でやり、さて本題にはいって日本語のインタビューを試みようと「じゃ、おかあさん、ここからは日本語で話しますので、おかあさんも日本語でおねがいしますね」と誘いをかけてみた。「うん、わかったよ」と日本語で答えてくれたはいいものの、二言目からは完全な韓国語になってしまう。再度、日本語でおねがいしますと水をむけてみたが、やはり「わかったよ」と日本語で言うが、すぐ韓国語になってしまう。こりゃあかん。…
 このおばあさん、東京生まれで東京の大学に通っていたときに、韓国人の旦那さんと知り合い…、韓国に来て結婚。…しかし結婚は親の反対にあい、結婚後日本に帰ったことはただの一度もないということだった。…
 …本人も韓国に帰化し子供たちもみな韓国で家庭をもっている。ことばもすべて韓国語だ。日本語ではじめてもすぐ韓国語になってしまうほど、韓国語が言語中枢の芯になっているわけだ。親の反対で結婚後は一度も日本の地を踏んでいない。日本はもはや関心はないはずだ。だから当然サッカーの応援も韓国を応援しているものと思った。
 「おかあさん、サッカーは日本と韓国、どっちを応援するんですか」
わたしは「韓国だよ」という返事を想像しながらそう聞いてみた。聞くまでないことだと思っていた。しかしいちおう、本人の口から確認しておくのも意味のあることと思って聞いてみたのである。
 ところがおばあさんのこたえは何と「日本だよ」というものだった。わたしははじめ、質問の意味をとりちがえているのかな、と思ったほどだった。もう一度確認のことばをかけてみた。やはり「日本」ということだった。…おばあさんのこたえはわたしにはあまりにも衝撃の大きいものだった。…アイデンティティということへの神聖さに、全身が雷に打たれたようなショックを受けたのである。アイデンティティというのはこんなに奥深いところまで入り込んで生きているんだ。…
 …人為的・人工的に日本よりも韓国を応援したりすることは、原理的にできない相談だったんだ。チャンネルを替えるように、簡単に切り替えできるようなシロモノではないのだ。そういうことがこのおばあさんと出会ってはっきり理解できるようになった。わかしはここ韓国で骨をうずめることになるかもしれない。そうなったとしても、サッカーの応援は日本以外にはできないのである。…
 こちら韓国の男性と結婚している日本女性で、ごくまれではあるが「あたし、韓国の応援するわよ」なんて言う人がある。第2次大戦前だったら「非国民」ということになるだろうし、現在だったら「ええ? けっこう愛国心がないんだね」ぐらいの対話になるのかもしれない。しかし、おばあさんと会った今、わたしははっきりと言うことができる。「ばか言ってんじゃねえ」と。つまり、彼女は嘘を言っているか、あついは本当の自分が何なのかもわからず生きている根無し草のような人格だと断言できる。アイデンティティというのはそんなに軽はずみなものではないのである。そんなに甘いもんじゃないのである。いかに韓国人のダンナを愛していても、である。…
(引用ここまで)

 アイデンティティの重み、心のよりどころ、といった人間の本質に迫る真剣なエッセイ。ズシーンと胸にきました。キーワードは「ふるさと」でしょうね。
 人は「心のふるさと」を求める。それは「土着」。生まれ育った「ふるさと」、そこにいるときは何も感じなくても、そこから離れてみて初めて感じる「ふるさと」。うちひしがれ、よりどころを失い、傷心しているとき、暖かく迎えてくれ、包み込んでくれる「ふるさと」。
 ヒトはサケやウナギと違うけれど、生まれ育った所へ無性に帰って行きたいという本能を持っているかのようです。

 これにて、木口政樹さんの著「おしょうしな韓国 ほのぼの韓流100話」の紹介を終わらせていただきます。読者の皆様に韓国文化、日韓文化の違い、といったものが少しはご理解できたでしょうか。
 なお、本書には、日本の朝鮮支配、その傷跡に関する記事も幾つかあり、それを紹介しようかどうか考えましたが、少々ヘビーでもあり、暗くもなりますから、この“一楽日記”にそぐわず、割愛することとしました。
 日本は台湾も同様に併合し、2つの異民族支配を経験したのですが、その後の両民族の対日感情は大きく違います。それはなぜか。国民性の違い、というよりはそこに根差している文化の違いから来るものと捉えるべきでしょう。小生はそう感じています。
 朝鮮(小生はこの名称が好き)には、あまりにも強烈な、西欧に引けを取らぬ、一種独特の個性的な文化が脈々と流れてきている、これは変えられることはない根深なものがあります。
 一方の日本、ここの文化は非常に奥深くはありますが、あまりにやわなものであり、大陸のような頑固さがないという欠点、それがためにグローバル世界の中で翻弄させられる、ということになるのでしょうが、しかし、生まれ育った「ふるさと」で染み付いた文化というものは、そう易々と変えられるものではないでしょう。三つ子の魂百まで、です。
 相手の文化を知り、それによって自分たちの文化を再認識し、そうしたなかから、理解に苦しむも相手の文化に根差したあらゆる事物・思いを尊重する、というスタンスを取ることによって、初めて相互理解というものが生まれるのではないでしょうか。文化に良いも悪いもありません。長い長いそれぞれの歴史の中から育まれてきたものですから、それをまるまる尊重するという以外にない性質のものです。
 「近くて遠い国」と言われる韓国。相互理解によって、もうそろそろ名実ともに「近い国」となってほしいものです。「韓流100話」の抜粋が少しでも読者の皆様のお役に立てたら幸いです。
 末筆ながら、勝手気ままに本書の引用をすることをお許しくださった木口政樹様に深く感謝申し上げます。

<2日前の日記:夕食>(記憶力増強トレーニング ※2
5品思い出す。うち1品は別の物。他に1品。4/7で60点

※1 2012.9.2別立てブログ記事で書きましたが、毎日何か楽しい出来事が少なくとも1つはあったはずであり、それを書き綴っていけば落ち込みから脱却できるとのことで、小生も“一日一楽”日記を付け始めました。
 また、このブログの2015.3.3の記事で紹介しました、ひすいこたろう著「ものの見方検定」に書かれている「小さな幸せに気づくレッスン」で次のように述べられています。
 「わたしは今日幸せでした。なぜならば…」、これの続きを3つ考えてから寝てください。寝る前に幸せを味わって眠ると、不思議と、朝起きたときの表情が違うんです。これも続けるとよくわかるのでぜひお試しくださいね。
 小生も早速これを始め、うち1つを記事にしたところです。
※2 2014.6.3ブログ記事「 100歳までボケない101の方法 」で書きましたが、その中で衝撃を受けたのが「2日前の日記を付けよう」で、次のように書かれています。
 記憶力を維持し、さらには高めることができ、ボケ防止に役立つ効果が大きいから、ぜひやってみてください。例えば2日前に食べたものを思い出すのはどうでしょう。前日のことならかなり鮮明に覚えていると思いますが、2日前となると途端にあやしくなりませんか。
 よって、小生も早速2日前の日記を付け始めたところです。
コメント(2) 
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コメント 2

天安

一楽さんへ。
[韓流100話]抜粋の連載、お疲れ様でした。
筆者としてもうれしいかぎりです。
こうして読んでいただけるということ自体、何ものにも変えがたい有難さです。
2013年に出版した[韓流100話]ですが、実はこの「アイデンティティ」という部分がコアだったんです。
「アイデンティティ」を書くために他の部分も書いて一冊の本にした、というのが筆者本人の舞台裏です。
これは誰にも言ってません。一楽さんだけに^^。
この部分を一楽さんも「人間の本質に迫る真剣なエッセイ。ズシーンと胸にきました。」
と深く読んでいただき、筆者冥利につきます。
“一日一楽日記”、毎日は入れませんが、これからもずっと応援してゆきます。
どうぞ、お元気で書き続けてください。
4月26日の「N君」の文章も心打たれました。
なつかしの友と会うのは、うれしいことですよね。
「朋(とも)の遠方より来たる有り、また楽しからずや」ですよね。

by 天安 (2018-04-30 09:50) 

どろんこ

天安さん、コメント有り難うございます。
舞台裏まで教えていただき、うれしいです。
小生も、このアイデンティティについてはビックリしました。[韓流100話]のなかで一番印象深かったです。

4月26日の「N君」の記事、サラッと書きなぐっただけですが、かえってそれが懐かしさをにじみださせたのかもしれませんね。
何のへんてつもない文章と思っていましたが、おほめいただき、有り難うございます。

南北首脳会談、これから毎年定期的に開催されて、統一へ向けての和平が一歩一歩進んでいくことをお祈りいたしております。
by どろんこ (2018-04-30 16:20) 

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