間もなく96歳になるおふくろは、最近ますます横着うなって、農作業をほとんどしなくなった。
 今朝、お隣さんのハウスを覗いてみたら、老婦人がおっしゃるには、キュウリ苗が大きくなり過ぎてしまったとのことで、頼んでおいた10本ほどを早速もらってきた。
 午後に小生が自分で植えるしかないと考えていたが、神社の奉仕活動が終わって、お昼に見てみたら、おふくろが既に所定の位置(立て札がしてある)に定植していた。
 “ほほー、まだまだやるじゃないか、おふくろは”
 ところが、午後になって、おふくろは、納屋の入口に立てかけてある支柱をガチャガチャ音を立てて選んでるようであった。
 “ん、これはボケ症状だ!”
 あわててそこへ飛んでいき、“それは本支柱だからずっと後だ。苗を植えた時には補助支柱の短いのを使え。”と言うも、耳の遠いおふくろであるからして通じない。
 そこで、本支柱の反対側に立ててある補助支柱を指差し、それを見て、おふくろはうなづき、理解した。

 いずれにしても、キュウリの定植だけでなく、補助支柱立てと結わい付けまで、おふくろがやってくれたのだから、多少のボケは目をつむることにしよう。
 まだ、これから幾種類か夏野菜の苗を定植せねばならないが、この分なら、昨年以上に働いてくれることだろう。それがボケ防止に最善の方策だ。
 “おふくろ、ガンバレ!”